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help リーダーに追加 RSS アルマダの戦い -- スペイン無敵艦隊の悲劇 (マイケル・ルイス著 新評論)

<<   作成日時 : 2008/04/07 00:09   >>

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 スペイン(イスパニア)の「無敵艦隊」とその敗北は世界史でも必ず習う有名な話ですが、その戦いの経緯や勝敗のポイントは、「巨大だが鈍重な無敵艦隊が、少数精鋭のイングランド艦隊の斬新な戦略に敗れた」という通説と事実とは、必ずしも一致していません。私自身も、今回取り上げた本を読んで、それまでの認識を大いに改める事になりました。この本の記述に従って戦いの経緯をまとめる前に、まずこの海戦に関するWikipediaの記事をリンクしておきます。 
Wikipedia: アルマダの海戦


 まず、両艦隊の規模はほぼ互角でした。参加人数はイスパニア側の方が遥かに多いのですが、これはイングランド本土に侵攻した場合の陸戦部隊を乗せていたためです。また参加艦船は、数字上はイスパニア側の方が遥かに大きくみえるのですが、実は両方のトン数の定義が異なっていて、イスパニア側の方が実態より大目の数値になっており、実際にはそれほどの差がなかったようです。そして搭載砲も通説とは異なり、むしろイスパニア側の方が大口径でした。しかしイスパニア側は重い砲弾の射程が短い砲だったのに対し、イングランド側は軽い砲弾の射程の長い砲で、この射程の差が戦いの経緯に大きな影響を与えます。

 実はこの両者の砲の差は、戦術目標の違いによるものです。イスパニア側は自分達より速い敵の動きを止めるため、重砲で帆やマストを破壊しようとしたのに対し、イングランド側は距離を保って敵艦を砲撃し、船体を破壊して沈没させようとしました。興味深いのは、イスパニア側だけでなくイングランド側も、自分達の目標を達成できなかった点です。イスパニア艦隊は敵から距離を置かれて、射程の短い砲撃が敵に届かなかったのに対し、イングランド側の遠距離砲撃は敵艦に当たったものの、砲弾が小さくて船体を大きく破損させられません。

 さらに兵站に関してはイングランド側の方が遥かに劣っており、自陣で戦っているにも拘わらず、食料や弾薬不足に悩まされています。どうやらこの原因は、特に弾薬不足に関してはエリザベス女王の吝嗇さにあったようです。

 以上の事実にも拘わらずイングランド艦隊が圧勝した最大の原因は、事実上の艦隊指揮官だったフランシス・ドレークの判断力でした。特にワイト島沖の会戦で、絶妙のタイミングで敵艦隊の進路を妨害して、ワイト島攻略という敵の戦略を失敗させたのが、直接の戦果はなかったとは言え、勝敗の帰趨を決する事になりました。その後カレー沖で有名な火船攻撃によって陣形を乱したイスパニア艦隊は弾薬不足にも陥って重砲が使えなくなり、イングランド艦隊の接近砲撃によって大きな損害を被ってしまいます。

 敗れたイスパニア艦隊は、スコットランド沖を回って大西洋経由で帰還する間に、戦闘で失ったより遥かに多くの損害を被ってしまいます。しかしその多くは外洋の荒波に耐えられずに沈んだのではなく、航路を誤ってアイルランド海岸に迷い込んだあげく、上陸した乗員達は捕らえられて虐殺されるという悲惨な運命によるものでした。この辺りの記述を読んでいると、戦争法規で捕虜の扱いが定められる以前の恐るべき現実に心が凍ります。

 もう一つ驚いたのは、この時代にはまだ旗信号すらなかった事です。各艦の連絡手段がないため艦隊の指揮は困難を極め、イングランド艦隊も後のそれとは比較にならないレベルでした。そんな中で、ドレークの個人的な名声が戦場で彼の艦の行動に従う船を増やす要因となり、それがまた彼の成功につながったようです。

 また、無敵艦隊の敗北からフェリペ2世が教訓を得たのに対して、エリザベス1世が何も学ばなかったというのもやや意外でした。フィリペが敗北から立ち直って、敵の海軍を真似た新たな艦隊を結成したのに対し、エリザベスは逆に十分な準備のないままリスボンへの攻撃を行って失敗した上に、ドレークらに恥をかかせて追い出します。確かに「無敵艦隊の敗北」は後のイングランドの興隆とイスパニアの没落へとつながって行く出来事ですが、直接それに結びつく出来事ではなかったようです。

 この本に関して検索してみたところ、最近公開された映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」と絡めて書かれた記事を発見しました。 真実の"無敵艦隊"

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